犬神家の一族

●犬神家の一族

監督/脚本:
  • 市川崑(『犬神家の一族』('76))
原作:
  • 横溝正史
出演:
  • 石坂浩二
  • 松嶋菜々子
  • 深田恭子
  • 加藤武
  • 中村敦夫
  • 富司純子
  • 松坂慶子
  • 萬田久子
  • 尾上菊之助
  • 葛山信吾
  • 池内万作
  • 奥菜恵
  • 岸部一徳
  • 蛍雪次朗
  • 大滝秀治
  • 三谷幸喜



私立探偵・金田一耕助は信州にいた。犬神財閥創始者・犬神佐兵衛が亡くなり、遺言状を預かる法律事務所の人間が"何か"が起こることを不安に思い調査を依頼したのだ。しかし、その依頼人は金田一に会う前に毒殺される。そして公表された遺言状──「佐清、佐武、佐智のいずれかとの結婚を条件に全財産を珠世に譲る」──その内容に一族の者は騒然となり、そして程なく菊人形の首が佐武の生首となって発見された……。


普通に楽しめました。リメイク作とはいえ、まさか石坂金田一を再びスクリーンで観れようとは思いませんでしたしね。

脚本は'76年のオリジナル版の物を使っているらしいので、そりゃ余程のことがなければ逸脱はしないでしょう('76年版との直接比較をするのは別問題)。

オリジナルキャストは石坂浩二、加藤武、大滝秀治の3人のみですが、新しいキャスト陣は見事に馴染んでます。

ただ、個人的には深田恭子だけは深田恭子のままでした。まるで昔の映像に深田恭子を合成しているかのような錯覚に陥りましたから(笑)。

'76年版はもっとおどろおどろしい印象があったのに、今回は意外とマイルドな感じ。何故だろう?と思ったら、どうやら過去の因縁部分の描写を大幅に削ったとのこと。なるほど。

確かにああいう時代的な部分って今の観客には伝わりにくいかも。今回はミステリーに特化させようとしたということでしょうか(それにしてはマッタリと時間が流れてましたが)。

例えば"生首"なんかも今の技術ならもっと生々しい表現ができるのに、昔と変わらず作り物っぽいままなのも、即物的な猟奇性は作品の邪魔になると踏んでのことでしょう、きっと、たぶん、おそらく。



ただ、「何故、今、本作をリメイクしたのか?」という疑問は当然のように抱くわけで。

しかも、オリジナル版の市川崑監督自らのセルフリメイクで、前述したように脚本も同じものを使ったとなると、一体、本作を作る意義がどこにあるのか、正直分かりません。

そりゃ、リバイバル公開じゃ客は入らないだろうから(ていうか今の映画界はリバイバル公開をしない)、再び劇場のスクリーンで観るための手段=リメイクなんでしょうが……。

やっぱり金田一耕助は石坂浩二だよなぁ、という感慨もひとしおなだけに、石坂金田一で映像化されていない作品を作ってくれてもいいんじゃなかろうかと。



まあ、90歳を越える市川崑監督にゼロから新しい金田一を撮らせるには不安があったとか、市川崑自らの手によるリメイクという話題性にすがった企画物でしかないとか、本作の裏事情をかんがみると色々と想像に難くないわけですが。

でも、監督は(たとえどんな意図の元にある企画だったとしても)もう一度、金田一を手掛ける好機と見たんでしょう。実際、ラストシーンのアレンジこそが監督にとっての「新作」であったのでしょうから。

監督は要望のままにきちんと"Re.犬神家"というものを仕上げたのだから、角川はせめて本作を起点とした金田一の新シリーズを監督に撮らせてあげてほしいものです(──というか金田一ファンとして石坂金田一の新作を観たい!)。

企画としては"3部作"ぐらいなら話題性も兼ね備えるから何とかなると思うんですけど。



とりあえず観て損はしないかと。

確かに本作の価値は「劇場のスクリーンで観れること」が大部分であり、これからDVD化されたのちは「'76年版」が同列に並ぶことで、本作の存在意義はかすんでしまうかもしれません。

しかし、金田一耕助というパーソナリティを監督が捉え直した上で帰結したラストシーンの変化には十分価値があると思いますし、それに観比べてみても面白いですしね。

★★★

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