T.R.Y.

●T.R.Y.

監督:
  • 大森一樹(『シュート!』)
出演:
  • 織田裕二(『ホワイトアウト』)
  • 渡辺謙
  • 今井雅之
  • 松岡俊介
  • 市原隼人(『黄泉がえり』)



えぇ~、何でこんなにつまらないの~。
ネタはいいのにもったいないなぁ……って、原作が面白いからこその映画化ですもん、ある意味、当たり前ですね。

私、織田裕二のことはわりと好きなんですが『ホワイトアウト』の時も日本の『ダイハード』になってくれるかと期待していたのに敢えなく玉砕。本作こそはと期待していたのに残念無念です。



本作は言ってみれば、ペテン師を主人公にした『スパイ大作戦』。織田裕二演じる《伊沢修》というペテン師が、ひょんなことから打倒清朝を目指す中国の革命家たちの依頼で日本陸軍の東中将をペテンにかけ、武器をくすねようという話です。計画がバレたかと思いきや、実はそれも予定の内……ってな展開はまさに『スパイ大作戦』のそれですね。

しか~し、これが観ている観客(少なくとも私は)にとって完全にバレバレでまったくドキドキ出来ませんでした。

唯一、成立していたのは、東中将が自分の会った男が本物の清朝の皇族だったかどうかを確かめるために留学先の日本陸軍士官学校を訪ねる場面。上映時間的にそろそろ計画がバレた展開になってもおかしくない頃だったこともあり、どっちに転ぶかが読めませんでしたから。



それにしても人物描写が圧倒的に足りません。

まず、主人公の伊沢からして深みが足りません。
一応、本作は軽妙なタッチの娯楽作にしようとしていたと思われるので仕方ないとも言えますが、結局は中途半端な結果になりました。
というのも中盤で、伊沢はその昔、別の国の革命家に武器を融通し、結果、全員死亡という重い過去を持つと判明するからです。つまり、その過去があるからこそ今回の依頼を(当初は)拒んでいた訳です。

ならば、それを回想という形で途中に入れるのではなく、タイトル前にこの過去のエピソードを配置し、タイトル後にアッケラカンとペテンを繰り返している伊沢……といった流れで見せた方が伊沢の外面と内面のズレを感じさせ、人物像が深まったのではないでしょうか。

(それにしても織田裕二の演技は力入り過ぎで1人だけ妙に浮いていましたが、ただ、大森監督は「往年のスター映画」を目指したそうなので作品が面白かったらこれはこれで許容範囲だったかも?)

革命グループの紅一点《愛鈴》は、当初、伊沢を「信用出来ない」といった態度だったのに、伊沢が姿をくらませた時には「伊沢は逃げたりしない」とかばいます。それは定石として大いにアリなのですが、それならそれで伊沢への印象を変化させる出来事をひとつ用意して欲しかったですね。

伊沢と伊沢の相棒の《パク・チャンイク》の絆が余り感じられなかったのも残念。ルパンと次元のような関係性を序盤でもっともっと感じさせて欲しかったですね。そうすればエピローグがもっと締まったでしょうに。



1人1人の描写が足りない割に登場人物は無駄に多いのが難。全体的にもっと削っていいでしょう。

調達屋(夏八木勲)と伊沢の弟分(市原隼人)はあの程度ならいりません。伊沢に恨みを持つ刑事(石橋蓮司)に至っては全く意味がありませんでした。料亭の女将(黒木瞳)は逆に描写が多すぎ……つーか、キャスティングミス。もっとホンワカしたタイプの方がラストの葉書の演出には合っていたと思います。

伊沢の命を狙う殺し屋と、東中将の弟(今井雅之)も消化不良でしたが、もし、ラストの機関車上で三つ巴の立ち回りが成立していればめっちゃ面白かっただろうなぁと思います。



全てが惜しい作品。レンタルビデオですら金返せレベルかも。
テレビ放送待ちが無難です。

★★

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