宇宙戦争

●宇宙戦争

監督:
  • スティーブン・スピルバーグ(『マイノリティ・リポート』)
出演:
  • トム・クルーズ(『マイノリティ・リポート』)
  • ダコタ・ファニング(『ハイド・アンド・シーク』)



H.G.ウェルズによる原作は1898年に発表。
映画的には1953年の同題名作品のリメイク。
それ以前にラジオドラマ化された際、それを聞いた人々が本当に火星人が攻めてきたと勘違いしてパニックになったという逸話が有名。



中盤までは確かに面白かった。世界規模で破滅していく世紀末感がちゃんと描けていた。侵略モノは数あれどそれを感じさせるものはなかなかないし。ジャンルは違えどこれは『ゾンビ』に迫る終末感。

唯一動く車に乗るトム君一家を襲う群集心理の恐さなんかもなかなかで、こりゃ物語の締め方次第ではスピルバーグのマスターピースになるかも?と期待したのに、終盤、とある一軒家の地下室に逃げ込んでから一気にトーンダウンしてしまった。



宇宙人から身を隠す一連の流れはまんま『ジュラシックパーク』の焼き直しだし、そもそもこの一軒家の目と鼻の先でさっきまで軍隊と宇宙人がドッカンバッコンやってたのに何でこの家だけ無事なの???との思いがず~っと引っかかって引っかかって。

それよりなにより少々正気を失っているであろう男とのやり取りに突入してからはマイルドなスピルバーグ節が顔を出してしまい全てが台無し。本シチュエーションでは"狂気"をえぐり出すように描いて、観ているこちらの胃をキリキリさせてナンボなのに。これじゃ『A.I.』の甘ったるさと一緒やん。何故、もっとグサリとナイフを突き立てられないのかなぁ。

この侵略劇のオチのつけ方は古典として皆ご存じの通りなわけですが、本作はかなりの急転直下ぶり。知らない人にとってはあまりの呆気無い幕切れにポカ~ンでしょう。

まあ「物語としての作りを放棄」して、あくまでも「一市民としての視点で語ろうとした」ってところでしょうか。しかし、肝心のドラマが成立してなきゃ映画自体を放り出したようにも見えかねない。



「これは家族の物語だ」なんてことを言うスピルバーグやトム君には悪いが本作から家族の絆なんてこれっぽっちも感じられなかった。

そもそも「離婚した父親」と「母親の元にいる兄妹」と「母親とその新しい旦那」が一堂に会するという現代アメリカの一般的な家庭の姿は、日本人のこの身には馴染みが薄く、感情移入へのハードルは高い。

週末を父親の家で過ごす兄妹の姿は、離婚した父親が子供と面会する権利上のことなのだが、パッと見、母親が男と遊ぶために別れた旦那に子供を預けにきた風に見えてしまうし。

まあ、兄妹は母親ベッタリというわけでもなかったので、私が文化の壁から勘違いして受け取った印象が全て間違いってわけでもなかったからいいんだけど。



一応、崩壊した家族が宇宙人の侵略の中で絆を取り戻そうとする話ではあった。しかし、最後まで一緒にいたトム君と娘の関係性すら「単なる旅の道連れ」で終わった感が。ラスト、娘が母親に抱きついちゃってはねぇ。

スペクタルを大画面で観るべき映画ではある。
でも、それだけ。

★★

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