仮面ライダーヒビキと7人の戦鬼

●仮面ライダーヒビキと7人の戦鬼

監督:
  • 坂本太郎(『パワーレンジャー/ワイルドフォース』)
出演:
  • 細川茂樹
  • 栩原楽人
  • 松尾敏伸
  • 渋江譲二
  • 川口真五
  • 松田賢二
  • 山中聡
  • 北原雅樹
  • 湯江健幸
  • 小泉孝太郎
  • 安倍麻美
  • 塚地武雅(ドランクドラゴン)



とある浜辺にオロチと呼ばれる巨大魔化魍が現れた。駆け付けたヒビキと明日夢だったが、圧倒的な力の前に響鬼は倒されてしまう。その責任を感じる明日夢はオロチ対策のため古い文献を調べていたが、その中に自分と同じ名前を見つける。それは遥か戦国時代の鬼の物語だった……。


毎年趣向を変える劇場版ライダーですが、今回は「鬼」という和風テイストから時代劇になるのは必然でしたか。

前回の『剣』、前々回の『555』と、劇場版ライダーはTVシリーズとは無関係のパラレル世界になっていますが(その前の『龍騎』に関してはパラレル世界自体が作品の根本設定となっていたので問題なし)、今回は時空を越えて帳尻を合わせようとした模様。

まあ、でも結局は本作の現代部分もTVシリーズとは無関係のパラレル世界になってしまいましたけどね(※本作のような響鬼と明日夢の師弟関係はTVシリーズでは描かれなかったし、アームドセイバーの設定も違いました)。

とりあえずプロデューサーの交代劇とかいった部分は別の機会に書く(かもしれない)として、ここでは映画の出来に集中して感想を書こうと思います(※以下、ネタバレ注意)



まず、物語構造が現代の明日夢が古い文献を読みふけることで戦国時代に舞台が移るという「現代」と「戦国時代」の二層構造になっていますが、これが上手く機能していません。

現代の明日夢の物語が「足がすくんだ自分のせいでヒビキが大怪我をしたことから勇気を振り絞る」なのに対して、過去の明日夢は「兄を死に追いやったヒビキを恨み、鬼を嫌っていたが……」というまったくの別物語。

明日夢を主人公とするなら「過去の明日夢も臆病だったけど、勇気を出してヒビキを助けたことを現代の明日夢は文献から知り、自分も勇気を振り絞ろうと頑張る」といった物語のリンクのさせ方がなければ意味がないでしょう。

しかも戦国時代の物語は、誰が主人公かが曖昧で感情移入するポイントが見当たりません。明日夢視点とカブキ視点とヒビキ視点が混在し、ただでさえ短い上映時間を無駄に消費する結果となりました(そういやカブキというキャラは井上敏樹脚本が好むタイプだよなぁ)。

途中、現代の病院で入院中のヒビキの描写が入りますが、そこに大した意味はなく、またさっさと戦国時代に舞台が戻ったりして、全体の印象も散漫です。



ならば本作の物語前提で考えるなら──

冒頭の1戦はオロチ相手ではなく通常の魔化魍相手。
そして明日夢が《猛士》(※ライダー支援組織)の活動で資料整理をしていると、古い文献に自分と同じ名前を見つけ、昔の鬼たちの活躍に思いを馳せると、そこから映画の舞台は戦国時代に移行する。

そのまま戦国時代での物語をずっと続け、そして遂にオロチとの最終決戦!……と思いきや、画面はフィルムが焼けるかのように止まってしまい、現代の明日夢が文献を捲る場面に。

なんと、それ以降のページが欠落していて結末はわからずじまい。そこへ魔化魍出現の一報が入り、ヒビキと明日夢は現地に駆け付けるが、そこで明日夢が見たのは文献で見たオロチそっくりの魔化魍。

苦戦する響鬼を前に、文献の記述を思い出した明日夢が洞窟に入ると1本の刀を見つける。その刀を必死に響鬼に届ける明日夢。そして《装甲響鬼》となった響鬼はオロチを一刀両断にする。

空を見上げ、戦国時代の鬼たちの勝利を信じる明日夢。
そしてエピローグ。
戦国時代での戦いを終えた鬼たちが全国へと帰っていく。その鬼たちを支援する組織を作ることを決意する過去の明日夢たち……。

──ぐらいの流れで見せればいいんじゃないでしょうか?



どうしても現代と戦国時代の描写を交互に入れる作りにしたいなら、物語自体にその意味を組み込む必要があります。例えば、冒頭の1戦で倒れたヒビキのその意識だけが戦国時代の響鬼の体に飛ぶといった話とか。

そこでヒビキは明日夢そっくりの男の子や仲間たちと出会って驚いたりしつつ、ハッと意識が戻ると現代の病室。
夢だったのかなぁと思うけど、再び意識を失うと戦国時代に。
そしてオロチとの最終決戦の最中に意識が現代に戻ってしまい、もう一度行かなければと思っても、もう二度と戦国時代には行けず。

そんな中、現代でオロチそっくりの魔化魍と遭遇。
響鬼は苦戦する中、戦国時代の記憶にある洞窟に明日夢を走らせると、そこには1本の刀が。
で、装甲響鬼となって倒す、と。

明日夢が「なんであそこに刀があるって知ってたんですか?」と聞くと、ヒビキは「お前が教えてくれたんだ」などと答えて、明日夢がきょとんとしたりして。
で、戦国時代でのエピローグが流れてFIN──。

まあ、これだと明日夢を脇に追いやってヒビキだけを主役に据えた作りになりますけど、脚本ほかスタッフが変わってTVシリーズの雰囲気を作れないのならこういう方向にしちゃうのも手だったのでは? それはそれで劇場版ならではという感じだし。



あとは──
安倍麻美のキャスティングが無意味。
ご当地ライダーという響きだけの企画。
TV版ライダー3人と劇場版ライダー5人との造形差がありすぎ(ハバタキとキラメキは許容範囲だけど)。

平成ライダーで私の一番のお気に入りだっただけに劇場版への期待も高かったんですが……残念。
恒例の「ディレクターズカット版DVD」ではもう少しマシになっているのかな? 機会があったら観てみたいものです。

★★

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