ステルス

●ステルス

監督:
  • ロブ・コーエン(『ワイルド・スピード』)
出演:
  • ジョシュ・ルーカス(『セッション9』)
  • ジェシカ・ビール(『テキサス・チェーンソー』)
  • ジェイミー・フォックス(『コラテラル』)



近未来、アメリカはテロ対策用ステルスを開発。選ばれた3人のパイロットが演習で十分な結果を出したことで、プロジェクトリーダーのカミングス大佐はもうひとつの計画を推し進めた。それは人工頭脳《エディ》搭載の新型無人ステルス機の実戦テストだった。しかし、ふいの落雷がエディを狂わせた……。


酷い。
何が酷いって根本的な物語の立ち位置が酷い。

近未来などという逃げ場所を用意してるけど、アメリカ=ステルス機が勝手に他国に入り込んでミサイル撃ち込んでテロを"するかもしれない"人間を勝手に処刑して回るという恐ろしい計画に、登場人物の誰一人として疑念を抱かない気持ち悪さ。

そう、本作はアメリカが世界各国に対テロ攻撃という名のテロ攻撃をする話。「全世界を破壊するステルスの暴走を阻止せよ!」というコピーは無人ステルス機ではなくステルス部隊全体を揶揄しているのだと、せめて思いたい。いや、思わずにはいられない。

さて、ネタばれ無視で書いていきます。



街の中心部にある一棟のビルだけを攻撃する最初の作戦で、横から攻撃するとビルが倒れて周りの住民に被害が出るからと、主人公・ベンは成功率の低い「真上から急降下してミサイルにスピードを乗せる」作戦を実行。爆撃成功。ビル崩壊の映像はまんま9.11テロの貿易センタービル崩壊のよう。……それでいいの?

その後、やはりパイロットは気を失いかけるがなんとか持ち直してビルの間を急上昇……あの~、ソニックブームは? 周りの被害は尋常じゃないはずが1コマも描写なし(『パールハーバー』ラストの日本空爆と同じ感覚か)。それ以前にそもそも失敗してたら住民巻き込んで墜落してたわけで。勝手に背負うリスクに意味はない。



核の扱いの軽さはどうにもならんのか。中盤、核を扱う作戦で「今の風向きでは人の住む村に放射能が流れるから中止すべき」などと言っているが、明日は?来週は?来月は?来年は? 核が当たった瞬間だけ風がなければ大丈夫なわけがないのに。

「核の恐怖をちゃんと扱ってますよ」という顔をしながら、所詮は「風が吹かなきゃ隣町は安心」レベルでしかない認識の露呈。他のあらゆるハリウッド映画を観れば、これがアメリカ人全体の共同認識と見て間違いない(現実世界でも劣化ウラン弾を躊躇せずバラまいてるわけだし)。



女性パイロット・カーラは機体が故障してたまたま北朝鮮に落下。不審人物の通報を受けてやってきた北朝鮮軍人から逃走する際に銃を躊躇なく撃ちまくる姿の傲慢さ。そりゃ北朝鮮はあんな国だけど、だからって殺しまくっていいはずがない。そもそも武装した不審人物が攻撃してくれば追跡するのは当たり前の行動でしょ?

しかし、北朝鮮軍人の描写は完全にステレオタイプの悪人集団的。ちょい前まで仮想敵国にしていた中東諸国の軍人描写(『ランボー3』等々)を置き換えただけ。あんなマッチョな北朝鮮軍人なんかいないっての。『007/ダイ・アナザー・デイ』以来の愚行。



人工頭脳・エディがベンと心を通わす描写が浅い。あっさり。淡白。舌っ足らず。ていうか実際は心なんか通わせてない。エディは修理が必要だったから単に利害関係で繋がっただけ。なのに最後はエディが身を挺してベンとカーラを助ける。安いヒューマニズムで泣かせようという魂胆見え見えの展開にゲンナリ。

機械が感情を持って我が身を投げ出すオチにしたいなら、エディは中盤で無関係の人を死に至らしめた(被ばくさせた)ことを悔いていなければならない。その上で「命を守る」ことを理解している必要があるのに。『のび太の海底奇岩城』のバギーの方が100万倍泣けます。



無人ステルス計画が失敗しそうになって、トカゲの尻尾切りを目論むカミングス大佐(と、その上の政治家)もまさにステレオタイプ。ベンが生き残り、裏工作が露呈して、いざ逮捕される段になると「少し1人にしてくれ」と言って銃で自殺するよくある展開。あほくさ。

あと何故か挿入されるタイでのバカンスシーンは無駄。主人公とヒロインの関係はそれ以外の描写で必要十分(ちなみにヒロインの水色の水着を見て「双葉里保?」と思った人、手を挙げて(笑))。他にも冒頭の寿司バーとか、無駄に世界配給前提の作り方をしてることに拒否反応。



良かったのはステルス機の映像だけ。物語はカス。とにかく、よく見る話をツギハギしただけ。本作は『アイランド』同様、米国内で惨敗したそうですがそれも当然かと。とはいえ、米海軍=世界の処刑人という設定への批難があったかは疑問ですが。

観る価値なし。
(※星は全てステルス機の映像に対して)

実はこの映画、始まる前に「この映画はエンドクレジット後にもエピソードがあります。最後まで席を立たずに観て下さい」てなテロップが出ます。私はいつだって最後まで居るので余計なお世話です。でも、わざわざテロップを出すのは珍しいので、さぞかしすごい大オチなんだろうと期待してたんですが……え~と、書いちゃいますね。エディの残骸の中で人工頭脳部分のランプがピコーンと点きます。終わり。ありきたりにも程があります。

★★

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